二次障害でお悩みの方へ

二次障害とは

1970年代、一般企業や障害者作業所に働く主として脳性まひの障害を持つ人たちの中で、肩や腰が痛む、しびれるなどの症状や、以前は歩けていたのに最近歩けなくなってきた、こまかい作業ができなくなってきたといった訴えがみられました。それらはもともとの障害と区別するために「二次障害」といわれています。
ここでは、二次障害でお悩みの方、また、よくご存じない方のための基礎的な内容を掲載します。

※私の体験談(二次障害ハンドブックより)

肢体障害者二次障害実態調査報告(抜粋)

目  次

発症のメカニズム

原疾患(たとえば脳性まひ)が一次障害(手足のまひやアテトーゼ運動)をひきおこし、加齢の影響とともに、種々の環境要因(その障害者が置かれている生活や労働の状況も含む)が影響を与えた結果、成人期に発症した二次的疾患(たとえば頚椎症)が二次障害(たとえばいままでなかった手足のしびれやまひ)を引き起こします。
二次障害発症のメカニズム図
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二次障害の原因となる二次的疾患とその症状

1.腰痛症
大部分は脊椎の両側にある腰背筋の筋疲労による筋筋膜性腰痛です。筋の緊張がたえず変化しやすいアテトーゼ型や筋の緊張が左右でアンバランスになりやすい片麻痺型脳性まひの障害をもつ人に多く見られます。他の疾患としては、腰椎分離症、腰椎すべり症や、坐骨神経痛を伴う腰椎椎間板ヘルニアなどがあります。
2.頚椎症(頚椎症性頚髄症および神経根症)
頚椎椎間板の変性に起因した、頚椎椎体の変形、椎間板ヘルニア、頚椎の異常可動性などにより、脊髄や神経根が圧迫され、頚部や上肢の痛み、しびれ、四肢のまひなど種々の神経症状を引き起こすものををいいます。成人期のアテトーゼ型脳性まひの障害を持つ人にしばしば見られ、二次障害の原因疾患として最も重要なものの一つです。
3.頚肩腕障害
上肢を使用した反復作業(たとえばキーボード入力、粘土をこねる、パン種づくりなど)に従事する障害者にみられる障害です。頚部、肩、腕のこり、痛み、だるさ、しびれといった自覚症状や筋肉の圧縮、硬結(しこり)などの症状が慢性的に持続するが、脊髄症や神経根症などの神経所見を認めないものを頚肩腕障害と呼びます。もともと緊張度の高まりやすい緊張性アテトーゼ型の脳性まひの障害を持つ人に多くみられます。
4.脊柱側彎症と胸郭変形
小児期より見られた脊柱側彎(背骨の曲がり)が成長とともに徐々に進行し、動作能力の低下をきたしたり、まれに高度の胸郭(胸の形)変形の原因となり、呼吸機能に影響する例(換気の障害)もみられます。股関節の障害を持つ障害者が歩行する際に、左右の脊柱起立筋に生じる筋緊張のアンバランスが原因と考えられる例もあります。しかし、常時臥床している重度性まひの障害者にも加齢とともに側彎の進行がみられることも多く、いろいろな原因が関与していると思われます。
5.変形性股関節症
脳性まひの障害としてしばしばみられる股関節周囲の筋力や筋緊張のアンバランス、あるいは骨盤の臼蓋形成不全(臼蓋のくぼみが浅い)などにより、しばしば股関節の亜脱臼が起こります。これはバランスの悪い歩行の原因となり、さらに成人期に至って大腿骨頭や臼蓋の変形をきたし、変形性股関節症と呼ばれます。起立時や歩行時に体重がかかると股の関節が痛むことが特徴です。歩行が自立していた脳性まひの障害者が成人期に歩行不能となる重要な原因疾患のひとつです。
6.関節拘縮
まひやまひにともなう筋緊張のアンバランスにより、関節の動きが長期にわたり制限されると、本来動くはずの関節の範囲が制限され、十分伸びない、曲がらないといったことがおこります。脳性まひの中では痙直型に多く、アテトーゼ型でも成人期に徐々に筋緊張の高まる緊張性アテトーゼ型ではしばしばみられます。進行を防止するために関節可動域訓練が行われますが、にもかかわらず年齢がいくにしたがって拘縮がすすむこともあり、歩行や食事動作、衣服の着脱が困難になるなど動作能力低下の原因になるだけでなく、重度の障害を持つ人では介護量の増加をまねく原因にもなります。
7.膝関節外傷性滑膜包炎
膝関節に無理な力がかかることが原因となって膝の関節を包む滑膜に炎症が起こり、膝関節が腫れてくるものです。関節に滑液がたまり、圧迫すると痛みます。慢性化すると膝関節の拘縮がおこり、膝が十分伸びなくなることがあります。歩行が困難で屋内移動を膝立ちで行う障害者に見られます。
8.肩関節周囲炎・手関節炎
独歩が困難で、杖(T杖や松葉杖、ロフストランドクラッチ)を使用する障害者に見られます。歩いた後、歩きすぎた後に肩や手首が痛くなり、症状が持続し慢性化することがあります。体重を支えるのに肩や手首に常に負担がかかることが原因です。このような二次的疾患は身体の特定の部位に無理な負担がかかり続けることにより発症する「使いすぎ症候群」のひとつです。
9.ポリオ後症候群(ポストポリオ症候群)
小児期にポリオに罹患し、まひが残っている人たちのなかで、成人期(とりわけ40代以上)になると、筋力低下、全身ないし筋肉の疲労、筋肉や関節の痛みが現れることがあり、歩行などそれまでできていた動作が困難になることがあります。また、息切れや、夜間の睡眠障害、日中の眠気など呼吸機能の低下や、食事の際、むせやすくなったなど嚥下障害を疑わせる症状がおこることもあり、このような現象はポリオ後症候群と呼ばれ、ポリオの二次障害として重要です。
10.原因が明らかでない二次障害
 ・発作性全身性ジストニア(筋緊張維持機能障害)
アテトーゼ型脳性まひの障害をもつ人は、身体の多くの筋の緊張が正常に保たれずに意思とはかかわりなく、筋の緊張が低下したり、亢進したりします。成人期になると、筋の緊張傾向が強まり、しばしば「緊張が入る」といった症状を訴えます。これは突然自らの意思にかかわりなく(不随意的に)生じる一連の筋群の持続的収縮(筋緊張亢進状態)のことを指します。
 ・呼吸機能低下
成人期の脳性まひの障害を持つ人に、以前より大きい声が出にくくなったとの訴えを聞きます。このような声量低下の原因は肺活量の低下によると思われます。いわゆる健常者も加齢にともない肺活量が減少していきますが、側彎の進行にともなう胸郭の変形などがあると一層その傾向が促進されると考えられます。これを拘束性換気障害と呼びます。
 ・病気にかかり易い(易感染症)
成人期になってよくかぜをひくようになった、かぜがなかなか治らない、こじらせ肺炎になった。こういったことは広い意味での体力低下によると思われます。加齢にともなう体力低下だけでは説明できず、十分な休養がとれない生活の中で慢性疲労の状態にある例もみられ、「歳」とかたづけずに改善できることはないか、生活習慣、生活・労働の現状など種々の面で見直してみることが大切です。
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どのような症状があればどのような疾患を疑うか

●頚部(くび)の痛み
   頚椎症、頚肩腕障害など
●肩の痛み
   頚椎症、頚肩腕障害、肩関節周囲炎など
●腕の痛み
   頚椎症(とくに頚髄神経根症)、頚肩腕障害など
●首から腕にかけて痛みが走る
   頚椎症(とくに頚髄神経根症)など
●手足のしびれ(とくに指先にいくほどしびれが強くなる)
   頚椎症性頚髄症など
●腰の痛み
   筋筋膜性腰痛、腰椎間板症、堆間関節性腰痛、足に痛みが走れば椎間板ヘルニアなど
●脚のつけねの痛み
   股関節亜脱臼、変形性股関節症など
●膝の痛み
   変形性股関節症、膝関節滑液包炎、膝関節内外側側副靭帯炎など
●手指でこまかい作業ができなくなった
   頚椎症性頚髄症など
●脚の力が落ち、歩きにくくこけやすくなった
   頚椎症性頚髄症、ポリオ後症候群など
●大きな声が出にくくなった
   拘束性換気障害(種々の原因疾患あり)
●のみこみが悪くなった
   嚥下障害(種々の原因疾患あり)
●全身や筋肉の疲労感、筋肉痛
   頚肩腕障害、ポリオ後症候群など

しばしば経験する症状と、原因となる主な二次的疾患の例をあげてみました。もちろん二次的疾患以外にもこれらの症状の原因となる疾患は多くあることはいうまでもありません。上のような症状があれば正確な診断と治療を受けるため、受診をおすすめします。
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二次障害への対策

現時点では「二次障害を防ぐ」と断言することは非現実的だと思われます。しかし、日々の身体のケアの対応によって二次障害の発症を遅らせること、軽減させること、進行を遅らせることは可能ではないかと考えられます。
そのためには、個人の障害軽減・機能改善と同時に、多くの関係者とチームをつくり、家族への援助・生活環境・労働環境へのアプローチが今後の流れとなっていく必要があります。
 
現実的な対策として以下のようなことが考えられます。
 
1.早期から医療機関と密接な連携をとり、専門家による適切な治療・訓練を開始し継続する
乳幼児期から継続的にかかることができる医療機関が大切です。成人期に突然医療機関へ行っても、これまでの経過、どう変化してきたかを理解してもらうことが困難です。これまでの経過を理解することにより、適切な対応を受けることができます。
2.乳幼児期の課題:集団保育の場と訓練を総合的に保障し、獲得した能力を生活の中で生かせるようにする
親も子どもも集団の中で生きていく力をつけていきます。楽しい集団・輝く集団が必要です。訓練は必要ですが、訓練のために生活が分断されないような配慮、生活の中で獲得した能力を発揮できるような配慮が必要です。
3.学齢期の課題:教育・訓練の統一的保障を考慮し、専門家による継続した訓練を
学齢期になると必然的に教育に重点がかかり、訓練の頻度が乳幼児期より低くなることが考えられます。しかし、頻度が落ちても訓練は継続する、持っている能力を生活の場で生かし、さらにより確かなものにしていくということが大切になってきます。学齢期の大切な活動を保障しながらも、必要な時に臨機応変に訓練を受けることのできる体制が大切です。
4.必要な時期に応じて手術を考える
将来を考えて適切な時期に手術を受けることも大切なことです。悪化してからではなく、予防的に行うほうが効果が大きいようです。しかし、手術後の訓練がきちんと保障されてこそ手術の効果は大きいといえます。
5.継続して日常生活の姿勢の管理を行う
日常生活、床上での普段の姿勢の管理が大切です。車椅子でも、支持点や支持面はどうなっているのかよく検討してみてください。目的に応じて、一人に多様な補装具・日常生活用具が必要になります。食事をする、移動をするなど目的に応じた適切な姿勢が大事です。また、長時間同じ姿勢をとりつづけないようにすることも大切です。身体の変形の変化をきちんと評価し、タイミングよく補装具・日常生活用具などを作製する、給付・貸与を受ける必要があります。
6.身体に合った適切な福祉用具(リハビリテーション訓練用具、補装具など)を使用する
本人や本人の身体とよく相談して作製していく必要があります。幼児期・学童期は成長や身体の変化に合わせて適切な時期に作製・修理などが必要となります。
学校卒業後も、身体の変形が進み、使用している補装具・日常生活用具などが身体に合わなくなることがおこります。しかし、現在は18歳を越えると補装具の作製などに制限が多くなるなど解決していかなければならない課題が多くあります。
7.少しの変化にも敏速に対応し、悪化させない
本人も周囲の人たちも、子どもの普段の調子のよい時の状態をよく知っておくことが必要です。
気をつけなければならないのは、我が子のことをよく知っているお母さんであるがゆえに「時々こうなるから」「こうなってもすぐ戻るから」と気楽に捉えてしまう傾向があることです。たびたびあることでも見えないところに大きな問題を抱えていることがあります。特に障害の重い子は予備力がないので急変することがあります。
8.過剰な努力は避ける、しかし適切な運動・運動量は保障する
過剰に努力すると、一定の方向の筋肉だけ過剰に収縮し、筋繊維に可動性がなくなり身体に変形が起こり、それが蓄積されて拘縮となることがあります。「ガンバリズム」は日本では美化されていますが、「一人ではできない。ここをこう手伝ってほしい」と言える勇気も必要です。
逆に二次障害を心配するあまりに動かなくなる人もいます。動かないでいると廃用症候群(使わないことによる身体機能の低下)の問題が生じます。適度な運動が必要です。
9.精神的安定を図る
10.生活環境・労働環境を見直す
本人と関係者の共同作業で進めることが大切です。生活する上でどこが不便と感じているか、どうなればもっと住みよくなるか、自分はどんなことがしたいか、仕方ないと諦めることなく自分の生活環境を見直し、その解決策を集団で検討してみることも必要です。労働環境・労働時間の見直しは社会との関係で大変難しいのですが、必要です。社会全体が不況の中、障害を持つ青年・成人たちは劣悪な労働条件で働いていることが多いのです。労働条件が悪くても次の就職先がないことを知っている彼らは、かなり無理をして働いています。これは、個人の力では根本的な解決は困難です。労働科学の研究者や医師など多くの関係者と考えていかなくてはならない問題です。
健康の自己管理能力を高める
自らの健康状態を知り、それをわかりやすく人に伝えられることは、健康の自己管理の前提です。その上にたって自らの生活習慣の上でなにをすればよいか、どのような援助が必要かを考えていくことが必要です。
(※垣内さんの手記参照)
ご家族の方へ
予期せず家族が障害児(者)を受け入れ、長期にわたって養育していくという生活は、家族全員に少なからぬ影響を与えるものです。それが個々人の幸福実現にマイナスの影響を及ぼすとすればこれもまた、二次障害といえるのではないでしょうか。
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※参考文献
  「二次障害ハンドブック」  二次障害検討会 編   文理閣

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